自民党の小泉進次郎議員が、第1子の誕生を機に育児休暇を取ることを検討、という報道が流れ、巷で話題になっています。
自民党の小泉進次郎衆院議員(38)は8月31日、記者団に年明けの第1子誕生後、育児休暇の取得を検討していると明らかにした。小泉氏は「率直に考えている。ただ、世の中でお勤めしている方と議員ではベストのあり方、理解が得られる形もきっと変わる。何が良い形なのか、周りの人たちに聞いている」と述べた。
出典:毎日新聞
小泉議員と言えば、言わずと知れた小泉純一郎元総理大臣の次男で、将来の首相候補とも目されています。先月、タレントでアナウンサーの滝川クリステルさんと結婚することを発表、同時に来年1月に第1子が誕生することも明かし、世間を驚かせました。
思いがけないビッグカップルの誕生に世間は湧きましたね。昨今暗いニュースが多かっただけに、久々に明るい話題となりました。
このニュースをきっかけに、男性の育児休暇がクローズアップされ、広く議論の対象になっています。
今回は、小泉氏の育休の意向に対する賛否を述べるのではなく、男性の育児休暇が浸透したら日本はどうなる?という視点でお話したいと思います。
結論から言いますと、
本来の価値観に回帰する
ということです。
この点について、本文でさらに深掘りしていきましょう。
「社会の主役は子ども」とはどういうこと?
一言で言えば、わたしたち大人の使命は、
より良き社会を
遺してあげること
ということです。
私たちが何らかの形で社会に貢献している活動(仕事を含めて)をしているのは、現在だけでなく、未来を良くするためです。
未来とは、言うまでもなく、今は幼い子どもたちの時代です。なので、
子どもたちがすくすくと育ち、社会に出て活躍できるような基盤を大人たちが力を合わせて作り上げるのが、本来の国や地域のあり方です。
ところが、高度に経済発展し、社会インフラが成熟してますます便利な社会になっていき、さらに子どもの数が減少する少子化の時代に入ると、「子どもたちのために」という意識が薄らいでしまったかのように思われます。
3世代同居が当たり前で農家、個人商店などの自営業が多かった時代は、家族みんなで子どもの面倒を見ることが可能でした。しかし、核家族化が進みサラリーマン家庭が社会の大半をなすようになった現代、夫が家事・育児に向き合う余裕がなくなり、いつのまにか「子どもは母親ひとりが育てるもの」という常識が出来上がってしまったのではないでしょうか。
父親も、母親も、子どもを育てることについては、同様の責任を背負っています。
そしてここで大切になってくるのは、
という発想です。
つまり私たちが日々働き、生産し、経済を回しているのは、ひとえに子どもたちの未来のためです。自分たちの世代のみが繁栄を謳歌するのではなく、かけがえにない子ども、孫の世代にも繁栄のバトンを渡す、ということです。
その意味で、父親である男性が、生まれて間もない子どものために育児休暇を取得することは、子どもを育て社会に送り出す、という最初の一歩の現場を体験するということ。この社会的意義はとても大きいです。
母親だけでなく、父親も真摯に子供と向き合い、夫婦で力を合わせて子どもを育てる。これこそが、社会を安定させ、国の発展につながる王道であることを、多くの男性が気づくきっかけになればと思います。
少子化問題に一石を投じる
さらに男性の育児休暇は、少子化問題にも好影響を与えることがわかってきています。
いま日本が抱える最大の問題は「少子化」と「人口減少」です。特に少子化は深刻で、厚生労働省が6月1日に発表した人口動態統計では、2017年に生まれた子どもの数(出生数)は前年よりも3万人余り少ない94万6060人にとどなり、過去最少を更新。合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数}は1.43で、2年連続の低下となりました。
その一方で、男性が育児・家事を分担する時間が多い家庭ほど、第2子以降が生まれる可能性が高いことが、統計でも明らかになってきました。
厚生労働省が発表した「第14回21世紀成年者縦断調査」の中にある、「子どもがいる夫婦の夫の休日の家事・育児時間別にみた、この13年間の第2子以降の出生状況」という調査において興味深い結果が出ています。
夫が6時間以上家事をする家庭では87.1%が第二子以降の子どもが生まれています。以下、4時間以上6時間未満では79.7%、2時間以上4時間未満では59.2%と減少し、夫の家事・育児時間なしでは10%となっています。
夫が積極的に家事を行うことは、第2子の誕生に寄与することが統計から判明したわけです。家族愛が高まり、夫婦の絆も強まることが新たな命をもたらすことは、とても素晴らしいことですね。「育児」というある意味人生最大の難事業を夫婦2人で協力し合えば、家族の繁栄と円満もおのずと築かれていくのでしょう。
育休浸透の切り札は「義務化」?
現実には、育児に為にまとまった休暇を取得するのは、まだまだ難しいです。
2018年度の男性の育休取得率は6.16%。過去最高となったものの、まだまだパーセンテージは低いです。育児休暇を認める側の企業や自治体など、社会全体の制度設計がまだまだ不十分です。
いくら父親となる男性が育児休暇を望んでいても、それを受容する社会風土と制度が確立されていないと、実行に踏み切るのは困難です。
なので、育児を希望する男性には育児休暇という選択肢を与えることが急務と言えます。それを行使するかしないかは本人の選択に委ねられます。
しかし、日本人ならではの「周囲の反応を気にする」国民性から、まだ育休取得率が少数のうちは、心情的に育休に踏み切れない、ということもあります。また、自分が職場を離れることで職場に迷惑をかける、ということが気がかりな人も多いでしょう。
このような状況を受け、男性の育休を「義務化」しようという議論も進められています。義務化することで、法律で決まっているから「仕方なく取る」という状況にした方が、男性の育児参加が前進する、という考え方です。
このためには、かなり高福祉な国家体制を構築する必要があり、一筋縄にはいかないでしょう。強制力が働くことで「育児をいやでもしないとけない」という状況に追い込むことは、国民の自由を制限することにつながり、憲法上の疑義も生まれかねません。
義務化には慎重な議論が必要ですが、国民的な深い議論が交わされることで、最善策がおのずと見出されていけばいいと思います。
おわりに
大切なのは、繰り返しになりますが、
ということ。
子どもの健やかな成長が家族の円満をもたらし、ひいてはこの国を発展へと導きます。圧倒的な知名度をもつ小泉氏が問題提起したことで、育児休暇への国民の理解が深まり、誰でも必要に応じて子育てに専心する期間を与えることは、未来の世代への積極的な「時間の投資」です。
夢と希望に溢れこの世に生を受けた赤ちゃんを、じっくり丁寧に育て上げる。それは大人たちの「この社会の主役」に対する責任なのです。