師走に入ると、忘年会シーズンに突入!というのがこの時期の定番フレーズなのですが、近年は少し様子が違うようです。
ここにきて「忘年会スルー」という言葉が急速に浸透してきています。ツイッターでは、#忘年会スルー というハッシュタグがトレンド入りして話題を呼びました。
盛り上がりを受けて、10日に放送されたNHKのニュースウォッチ9では、今どきの忘年会事情について特集されていました。
ネット上で話題になっている言葉「 #忘年会スルー 」。とくに若い人たちの間で、忘年会に行きたくないという声があがっています。この状況に対し会社側は、あの手この手で盛り上げようとしています。
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— ニュースウオッチ9 (@nhk_nw9) December 10, 2019
番組内容は、NHKニュースサイトでもリポートされています。
師走に入り、忘年会シーズン真っ盛り。でも毎日飲み会続きで胃腸がつらい…というのは、もう過去の話かもしれません。日本のお父さんたちが大切にしてきた“飲みニケーション”が、若手になかなか受け入れられなくなる中、忘年会の姿も変わりつつあるようです。皆さんの会社は、忘年会する?それともスルー?
出典:NHKニュースWEB
このニュースがオンエアされてから、#忘年会スルー はさらに拡散されたようで、様々な議論が沸き起こっています。
今日の本題は、
ということなんですが、いきなり結論からいいますと、
勤務時間外に
職場以外の場所へ行き
職場の人と「飲む」
ことに抵抗を感じている
これが、今回の特集で明らかになった要因です。
これらの、忘年会を敬遠する心理的な障壁を取り外す企業の取り組みを直接取材してレポートしたのが今回の特集で、大きな話題を呼んだのもうなずけます。
今回は、このNHKニュースを参考資料に、忘年会スルーという現象の真相について考察していきたいと思います。
忘年会完全スルー=0回の人も多い
まず記事では、忘年会に1回も行かない人が31%にのぼることを記しています。
少し驚いたデータもありました。時計メーカー、「シチズン時計」がビジネスマン400人に今年の職場や取引先との忘年会の見通しを尋ねたところ、1回が50%、0回が31%だったそうです。10人に3人が忘年会ゼロなんです。
SNSを見ていると、

今日忘年会に行ってきた。焼肉囲んで楽しかったぜ~。
とか、

仲良し女子で忘年会♪みんな大好き~☆
などなど、忘年会の様子をアップしている投稿を数多く見かけますが、その多くはどうやら「職場以外」の忘年会のようですね。逆に職場の忘年会の様子を撮影してSNSに投稿している人は少なそうです。
あの「Chatwork」は飲み代を社員に支給!
忘年会のみならず、職場による飲み会そのものを敬遠する風潮が強まっていることが、ある新興企業の取り組みによって浮き彫りになっています。
その企業とは、「Chatwork」です。

あ、知ってる!いま入っているオンラインサロン、Chatworkで連絡取り合ってるよ!
と、ピンときた方もいらっしゃるでしょう。
職場での「飲みニケーション」は消えていくのか。そう思って調べていくと、なんと会社が飲み会の費用を負担してくれる”飲んべえ”にはたまらない会社が見つかりました。
東京・港区のIT企業「Chatwork」です。従業員はおよそ100人。
ビジネス用のチャットサービスを提供しているこの会社では、従業員同士のやりとりの多くがチャットを通じて、行われています。さらに、2年前にオフィスの移転で開発部門と営業部門のフロアを分けたため、社員同士の対面でのコミュニケーションをどう進めていくかが悩みの種でした。
出典:NHKニュースWEB
私もチャットワークを使用しています。とても便利な機能なんですが、同時にリアルでの交流が薄くなりがちなんですよね。会わずしていろんなことが完結してしまうので。
このような便利なツールに慣れてしまうと、一緒に飲みに行こうなんて二の次で、リアルなコミュニケーションをいかに構築していくかがポイントになる時代なんですね。
大元であるChatowork社も同様で、「飲み二ケーション」に積極的でない若手の社員が増えたことで、何らかの対策に迫られたようです。
そこで、この会社では、お互いのフロアの真ん中にバーカウンターを配置。仕事が終わった後で、酒を飲みながら交流できるようにし、月に1回、1人1400円まで会社が費用を負担します。また、3か月に1回開かれる会社全体の飲み会は、1人4000円まで補助されるということです。
これは斬新な取り組みですね。「タダ」でなおかつ歓楽街に移動でなく社内で飲めるとなれば少し話が違ってくるようで、「これなら大丈夫」と気軽に参加しやすいシステムを作ったわけですね。
20代の女子社員は、「前の会社では飲み会に参加しないタイプだったんですけれど、社内で開かれているので仕事終わりでも来やすいです。自分で4000円、5000円払って上司の話を聞かなくちゃいけないというのは、すごいハードルが高いんですけれど、お金も出るし、ごはんを食べられる感覚で来られるのは大きいです」と話していました。
これは極端な意見ではなく、多くの方が自然に抱いている思いではないでしょうか?
Chatwork人事部の内田良子マネージャーは「飲み会も福利厚生の一環です。対面でコミュニケーションを取るということで、楽しく創造的に働くというのを体現していきたい」と話しています。
「飲み会=福利厚生」。まさしく発想の転換ですね。コミュニケーション不足による社内いじめやパワハラが社会問題になっている昨今ですから、和気あいあいとした雰囲気を作るのも社員を保護するために必要な経費、という割り切りが感じられます。
「昼間の忘年会」なら抵抗もない?
忘年会は夜やるもの、というみんなが漠然と信じていた常識をくつがえす動きもあるようです。
一方で、最近、注目を集めているのが「ランチ忘年会」です。料理の宅配サービスを行う「マンチーズケータリング」によりますと、一年で最も注文が多いのが、忘年会シーズンの12月。注文は去年の2倍に増えていて、半数近くがお昼の注文だといいます。
出典:NHKニュースWEB
前述の通り、「大金を払って」「会社以外の場所で」過ごす、ということが忘年会など夜の飲み会を遠ざけている背景にあるわけですが、本来は自由な時間であるはずの勤務時間後の夜に社内の人と付き合わないといけない、ということもまたストレス要因になっていることがうかがえます。
「マンチーズケータリング」を運営する「ノンピ」の光山徹圭 執行役員は、「ここ2、3年で一気に増えているように感じます。移動時間もかからないので、限られた時間でできるし、社内で開くことで、情報漏えいのリスクも軽減できると考える人が多いようです」と話していました。
会社側にとってもメリットがありそうですね。
また、昼であればお酒も入らないので醜い愚痴話などに付き合わされることはないですから、お互いに腹を割った建設的な会話が生まれやすそうです。
また、「昼の忘年会」は、夜に「行けない」事情がある人にもフィットしているようです。次項でご紹介します。
夜の飲み会に「行けない理由」も様々
プレスリリースなどの企業広報を担っている会社「PR TIMES」は、飲み会に行けない様々な事情を汲み取ったうえで、最善のコミュニケーションのあり方を模索しています。
毎月2回、ランチ会を開いているのが東京・港区にある企業の広報などを扱う「PR TIMES」です。子育てなどで夜の飲み会に参加出来ない社員が増えてきたため、みんなが参加出来る昼の時間に社員同士のコミュニケーションを図ろうと、取り組んでいます。
2歳の子どもがいる小林保さんは、子どもの送り迎えや夕飯を作るため、時短で働いていて、夜の飲み会は参加することが出来ません。ランチ会は午後の仕事もあるため飲み物はお茶ですが、その分、会話に集中することができる感じが楽しいと言います。
小林さんは、「夜の飲み会に参加出来ないのは少し悔しい思いもあったので、昼でカバーできるのはいいと思います。今は働き方がすごく多様化しているので、今後も広がっていくといいなと思います」と話していました。
核家族で共働きが当たり前の昨今においては、小林さんのような方は多数いらっしゃいます。
社員全員が揃っている昼の時間は、今の時代においてはむしろ「最適な時間」かもしれませんね。
「PR TIMES」の名越里美 執行役員は「若い人が上司と飲むのに抵抗がある気持ちもすごく分かります。必ずしも飲み会の場で誰かに連れて行かれて話を聞くというのではなくて、今はもっと個人と個人がコミュニケーションをフラットに取った方がいいと思います。飲み会の形にこだわらなくても同じテーブルで一緒になった人たちが、会話できる場所が作れればいいのかなとも思っています」と話していました。
「忘年会」というと、飲み会のイメージが固定化していて、それに対する嫌悪感がある人は避けたがりますが、そのような決まりきった枠を取り払った自由な集まりとして、昼にパーティを開くのも時代に合っているのでは、と思います。
忘年会を「外注」する新アイディアも
昨今はパワハラ基準が厳しくなり、人間関係がとりづらくなっているのもまた事実。忘年会ともなると、幹事などの役割を押し付けられることもあり、すでに前段階から嫌悪感を抱く人も決して少なくはないようです。
外部パワーを借りることでなんとか忘年会を開こうという動きも広がっています。
東京・品川区にあるブライダル事業を展開する会社のイベント代行サービス部門「イベモン」では、「幹事代行サービス」を行っています。
幹事業務を若手や新入社員に頼むことが、「パワーハラスメントにあたるのでは?」「景品を買いに行かせるのは残業になるのでは?」などと懸念して、リスク管理のひとつとして企業からの依頼が年々増えているそうです。コミュニケーションを図るため、「上司と部下」、「役員と新人」など立場の違う人材でチームを組んでゲームをするイベントも用意しているということです。歩数計をつけて制限時間内に歩数を競うゲームもあるそうです。
斬新なアイディアですね。これだと、無理して部下に役割を割り当てる必要もないですし、それなりのノウハウをもった企業が質に高いパーティを準備してくれますから、一石二鳥のようです。
また、渋谷区のイベントプロデュース会社「マックスプロデュース」にも結束力を高めたいという企業からの忘年会の依頼が複数入っていて、桑原裕文社長は「転職が当たり前になる中、会社のビジョンを社員と共有して働く意欲につなげたいというねらいがあるのではないか」と話していました。
もう終身雇用の時代は過去のモノになろうとしています。社内で深い人間関係を築くメリットが薄れているのもまた時代の流れということでしょうか。
日々のコミュニケーションの積み重ねが大事
以上のことをレポートしたうえで、特集では以下のように結んでいます。
“忘年会スルー”について取材をしていると「その気持ちすごくわかる」という声をよく耳にしました。
さらに忘年会の幹事については、なんとか会を盛り上げようと頑張っても参加人数が集まらずに大変な思いをしたという人も何人もいました。
その一方で会社を取材すると、働きやすい職場作りのために忘年会をきっかけに社員同士のコミュニケーションをはかろうとする動きが広がっていると思いました。
1年に1度の忘年会くらいはみんなで集まって飲んでもいいじゃないかという声も聞こえてきそうですが、結局はふだんのコミュニケーションをどうとっていくのか、みんなが楽しい雰囲気で働けるよう、アイデアを出し合うことが求められているのではないかと感じます。
日常の社内のコミュニケーションに窮屈さを抱えていると、忘年会であれ何であれ、みんなが顔を揃えるパーティに出席するのがおっくうになるのは当然です。
忘年会をスルーしたくなるのは、忘年会そのものではなく、職場の人とのコミュニケーションを深めることの難しさ、めんどくささが根底にあるのではないか、と感じさせるレポートだったと思います。
おわりに
忘年会の本当の目的は何でしょうか?それは…
コミュニケ―ションを育てる機会
ではないでしょうか。
ところが、
という「~しないといけない」というネガティブな反応が出てしまう時点で、忘年会は本来の役割を失われてしまっているようにも思えます。
#忘年会スルー の拡散は、最適なコミュニケーションのあり方を、今の時代に即して育てていくべきではないか、という「大衆のメッセージ」が反映されているのではないでしょうか。